人は面白い噂話に夢中になる『ファイア・ドーム』

本の感想
人は真実より、面白い物語を選ぶ

真実よりも、憶測や噂話に惹かれてしまう人間の心理の怖さを描いた上下巻合わせて896ページのミステリー大作です。

1994年、ある地方都市で誘拐殺人事件が起きる。犯人は逮捕されたが、
地域住民の事件への関心は高く、過剰な報道や真実とは全く異なる事件の噂話が
飛び交い、被害者家族を精神的に苦しめた。

自分の身近な場所で事件が起こった時、人は興味を持ってその話題を口にし
真偽が定かでない話が広まっていく。自分の周りでも起こりえるかもしれません。
悪意なく発する言葉が誰かを傷つける。興味を持ってしまう気持ちがあっても
『口は災いの元』言葉を口に出す時は、慎重によく考えないといけないと思いました。

そして25年を経て、同じ地域で小学生の少年が突然行方不明になります。
その少年は、25年前の殺人事件の被害者の甥であり、同じ家族で起きた事件に
再び人々の間で憶測や噂話が持ちあがります。
現代ではインターネットやSNSの影響で、限られた地域だけでなく、遠く離れた
全く知らない人たちにも噂が広まり、事件の関係者が一方的にバッシングを受けることが
あります。
本書でも少年の担任教師がある報道をきっかけに、世間から悪者扱いされ、SNSで
バッシングを受け精神的に追い詰められていきます。

世間ではたくさんの噂話が出回っています。
今は色々な情報があまりにも多すぎてどれが真実なのかも分からない。
自分が信じた話が正しくて、反対の意見の人を徹底的に批判したり、
傷つけたりする。そんな世の中にも問題を投げかけた一冊であると感じました。

25年前の殺人事件と少年の失踪事件は思いがけない展開で真相が明らかになり
読み応えがあります。秋の夜長にじっくり読んでいただきたい一冊です。



つむぐ

大阪在住。50代主婦。
40代後半に職場の近くの図書館で本を借り始め読書に目覚める。
本を読んでみたいけど、何を読んだらいいの?
面白い本があったら知りたいという方に向けて本のレビューを書いています。

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